モンテカルロ・シミュレーション

FPが実際に老後相談で使うモンテカルロ・シミュレーションの考え方

老後資金の相談を受けていると、多くの方がこう言います。
「シミュレーションをすれば、将来が分かるんですよね?」

しかし、FPとして実務に携わる立場からは、
この認識は半分正しくて、半分危険だと感じます。

なぜなら、老後相談で使うモンテカルロ・シミュレーションは、
将来を当てるための道具ではないからです。

では、FPは実際の現場で、
シミュレーションをどのように使っているのでしょうか。


老後相談のゴールは「正解を出すこと」ではない

まず前提として、FPが老後相談で目指しているのは、
「この通りにやれば絶対安心」という正解を出すことではありません。

老後には、

  • 市場の変動
  • インフレ
  • 健康状態
  • 家族状況
  • 働き方の変化

など、コントロールできない要素が無数にあります。

そのためFPが重視するのは、

  • 将来が多少ズレても破綻しないか
  • 想定外が起きたときに対応できるか
  • 不安で行動を変えてしまわないか

という耐久性です。

モンテカルロ・シミュレーションは、その耐久性を確認するために使われます。


FPがまず確認するのは「平均」ではない

相談者が持ってくるシミュレーションの多くは、

  • 年率〇%で運用
  • 〇歳まで資産は増え続ける

といった、平均的な一本道で描かれています。

しかしFPが最初に見るのは、そこではありません。

  • 想定より悪い年が続いたらどうなるか
  • 退職直後に大きく下落したら耐えられるか
  • 取り崩しを始めるタイミングで暴落したらどうか

つまり、ズレた場合の姿です。

平均リターンは参考にはなりますが、
老後相談では「前提条件」にはなりません。


シミュレーションは「会話を始めるための材料」

FPがシミュレーションを使う最大の理由は、
相談者との会話を深めるためです。

数字を見ながら、こんな問いを投げかけます。

  • この下振れのケースを見てどう感じますか?
  • ここまで資産が減ったら生活は続けられますか?
  • この期間、働く選択肢はありますか?

シミュレーションは、
「正解を示す答え」ではなく、
価値観を引き出す質問装置として使われます。


メンタルが耐えられない設計は、実務ではNG

老後相談でよくある失敗は、

  • 数字上は成立している
  • でも本人が耐えられない

というケースです。

たとえば、

  • 成功確率は高い
  • ただし下振れ時の落ち込みが大きい

このようなプランは、
現実には途中で崩れやすい

FPは、

  • 「できるかどうか」ではなく
  • 「続けられるかどうか」

を重視します。

そのため、シミュレーション結果を見て
相談者の表情が曇るプランは、
数字上よくても採用しません。


「最悪ケース」を見るのは不安を煽るためではない

最悪ケースを示すと、
「そんな怖い話を聞きたくない」と言われることもあります。

しかしFPが最悪ケースを見る理由は、
不安を増やすためではありません。

  • 最悪を知らずに遭遇する不安
  • 知ったうえで備えている安心

この差は非常に大きい。

最悪ケースを事前に見ておくことで、

  • 想定外が減る
  • 行動が安定する
  • 計画を信じやすくなる

という効果が生まれます。


老後相談で重視されるのは「余白」

FPがシミュレーション結果から必ず確認するのが、
余白です。

  • 支出を調整できる余地
  • 取り崩し額を下げられる余裕
  • 一時的に働く選択肢

これらがあるかどうかで、
同じ数字でも安心感は大きく変わります。

ギリギリ成立するプランより、
少し余裕のあるプランのほうが、
老後ははるかに安定します。


モンテカルロ・シミュレーションは「検証」ではなく「設計」

一般的には、
「シミュレーション=検証」
と考えられがちです。

しかしFPの感覚では、

  • シミュレーションは設計図
  • 何度も修正する前提のもの

です。

  • 条件を変えて
  • 結果を見て
  • 感情の反応を確認して
  • もう一度設計し直す

このプロセスそのものが、
老後相談の本質です。


FPがシミュレーションを使い続ける理由

シミュレーション結果は、
確かに当たりません。

それでもFPが使い続ける理由は明確です。

  • 不確実性を見える形にできる
  • 会話が具体的になる
  • 行動のブレを減らせる

老後資金で本当に避けたいのは、
「計画が外れること」ではなく、
不安で行動を変えてしまうことだからです。


老後相談で大切なのは「当てること」ではない

老後相談でモンテカルロ・シミュレーションを使うとき、
常に意識しているのはこの一点です。

将来を当てることより、
当たらなくても壊れないこと。

シミュレーションは、
未来を予言する道具ではありません。

不確実な未来を、冷静に生き抜くための道具です。

それが、FPが実務でシミュレーションを使い続ける
本当の理由です。

専門家とともにシミュレーションを使うことは、単に数字を出すだけでなく、あなたのライフプラン全体を立体的に捉える助けになります。モンテカルロ・シミュレーションは、多様な未来を考える上で有益ですが、その結果をどう解釈し、意思決定につなげるかが最も大切です。

下記ページでは、こうした長期的な資産形成の考え方や、将来の資産推移を客観的に把握するための全体的な視点も整理しています。より深く計画を理解したい方は、あわせてご覧ください。