資産運用や老後資金の話になると、
多くの人がまずExcelを開きます。
- 年率〇%
- 毎年これくらい増える
- 〇歳時点で資産はいくら
一見すると合理的で、数字もはっきりしている。
しかし、FPとして実務で相談を受けていると、
Excelの将来資産計算が原因で判断を誤っているケースを数多く見てきました。
Excelは便利な道具です。
ですが、使い方を間違えると非常に危険になります。
Excelは「正確に計算できる」からこそ危ない
Excelの最大の特徴は、
入力した前提条件に対して、正確な計算結果を返すことです。
問題はここにあります。
- 前提が間違っていても
- 現実離れしていても
Excelは何の疑問も持たず、
きれいな数字を提示してしまう。
その結果、
「Excelで計算したから正しいはず」
という錯覚が生まれます。
危険① 平均リターンが「毎年出る」と思ってしまう
Excelの将来資産計算で最も多いのが、
- 年率3%
- 年率5%
といった平均リターンを毎年そのまま当てはめる計算です。
しかし現実の市場は、
- 上がる年
- 下がる年
- ほとんど動かない年
がランダムに訪れます。
Excelの計算結果は、
毎年きれいに増え続ける未来
を描きますが、
それは現実にはほぼ起こりません。
危険② 下落の「順番」が消えてしまう
Excelの計算では、
- いつ下落が起きるか
- どのタイミングで暴落するか
という順序が完全に消えます。
しかし老後資金では、
- 退職直前の下落
- 取り崩し開始直後の暴落
が致命的な影響を与えます。
Excelの計算表では、
この順序リスクが一切見えません。
危険③ 最悪ケースが存在しない
Excelの将来資産表には、
- 最悪ケース
- 厳しいシナリオ
が出てきません。
表示されるのは、
- 想定通り
- あるいは想定より良い
未来だけです。
その結果、
- 「ここまで減る可能性がある」
- 「この状態でも生活できるか」
といった、
本当に重要な問いが抜け落ちます。
危険④ 数字が「安心材料」になってしまう
Excelの計算結果は、
- 数字が明確
- グラフも滑らか
なため、
強い安心感を与えます。
しかしその安心は、
- 不確実性を排除した安心
- 想定外を考えない安心
です。
FP実務では、
この状態が一番危険だと感じます。
危険⑤ メンタルの耐久性が一切検証されない
Excelは、
- 計算は得意
- 感情は考慮しない
道具です。
しかし資産運用で失敗する最大の原因は、
計算ミスではなく、行動のブレです。
- 想定以上に下落した
- 不安になって売った
- 計画を変えた
Excelの将来資産計算では、
この「行動が変わる瞬間」がまったく考慮されません。
なぜ多くの人がExcelの投資シミュレーションを信じてしまうのか
Excelが危険になりやすい理由は、
身近で、誰でも使えるからです。
- 自分で作った
- 自分で計算した
という感覚が、
「自分で納得した正解」
という錯覚を生みます。
しかし、
納得感と安全性は別物です。
FPがExcelの資産運用シミュレーション計算をどう扱っているか
FP実務でも、
Excelを使う場面はあります。
ただし、その使い方は限定的です。
- おおまかな把握
- 現状整理
- 条件を変えたときの影響確認
「答えを出すため」ではなく、
「前提を確認するため」に使います。
Excelの結果を見て、
「この通りにいく」
とは決して考えません。
Excelの弱点を補う考え方
Excelの弱点を補うために必要なのは、
- ばらつきを考える
- 最悪ケースを見る
- 行動が変わらないか確認する
ことです。
ここで有効になるのが、
- 複数シナリオ
- モンテカルロシミュレーション
- 下振れ耐性の確認
です。
Excel単体ではなく、
不確実性を前提にした道具と組み合わせる必要があります。
Excelは「入口」であって「答え」ではない
Excelの将来資産計算は、
- 入口としては有用
- しかし答えにはならない
道具です。
Excelで出た数字を見て、
- 安心する
- 期待する
- 信じ切る
この瞬間から、
老後資金計画は不安定になります。
危険なのはExcelではなく、使い方
最後に強調したいのは、
危険なのはExcelそのものではない、という点です。
危険なのは、
- 平均だけを見る
- 1つの結果を信じる
- 不確実性を無視する
使い方です。
Excelは、
未来を当てるための道具ではありません。
不確実な未来を考える「出発点」として使う。
その位置づけを誤らなければ、
Excelは今でも有効な道具であり続けます。
将来資産をExcelで計算することは、予測値を把握するうえで便利ですが、単一の数値に頼るだけでは実際のリスクや不確実性を見落としてしまう可能性があります。数字の扱い方だけでなく、全体の資産形成設計として未来をどう捉えるかが重要です。
下記ページでは、こうした長期的な資産形成をより立体的に考えるための視点や、将来の資産推移を客観的に把握するためのシミュレーション解説も整理しています。より正確で堅実な計画を描きたい方は、あわせてご覧ください。
