――結果を分けたのは「運用成績」ではなかった――
投資の話をしていると、不思議な現象がよく起こります。
同じ条件で投資を始めたはずなのに、結果がまったく違うのです。
ある人は資産が半分に減り、
ある人は2倍以上に増えている。
この違いは、いったい何から生まれたのでしょうか。
「同じ条件」とは何か
まず、この記事でいう「同じ条件」を明確にします。
今回想定する条件は次のとおりです。
- 初期資産:1,000万円
- 積立:なし(一括投資)
- 投資期間:20年
- 投資対象:同じ分散ポートフォリオ
- 平均リターン:年率5%
- 長期的な市場環境:同一
つまり、
運用商品も、期待リターンも、期間もすべて同じ
です。
それでも、最終結果は大きく分かれます。
結果を分けたのは「順番」
この差を生んだ最大の要因は、
リターンの「順番」です。
たとえば、
- 初期に大きく下落し、その後回復するケース
- 初期は好調だが、後半に大きく下落するケース
平均すると、どちらも年率5%前後になります。
しかし、実際に体験する資産推移はまったく別物です。
なぜ順番がそんなに重要なのか
一括投資では、
最初に起きる出来事の影響が非常に大きい。
初期に大きく下落すると、
- 評価額が急減する
- 精神的な不安が増す
- 「このまま続けて大丈夫か」と感じる
この時点で、
同じ条件だったはずの計画に差が生まれ始めます。
資産が半分になった人の行動
資産が半分になった人は、
必ずしも知識がなかったわけではありません。
多くの場合、次のような行動を取っています。
- 想定以上の下落に不安を感じる
- 一部を売却してリスクを下げる
- 回復前に投資をやめてしまう
結果として、
- 安いところで売り
- 回復の恩恵を受けられない
という流れに入ります。
重要なのは、
これは「判断ミス」というより「自然な反応」だという点です。
資産が2倍になった人の行動
一方、資産を2倍にした人は、
- 下落が起きることを事前に理解していた
- 「これは想定内だ」と認識できていた
- 行動を変えずに持ち続けた
という特徴があります。
特別な売買をしたわけではありません。
「何もしなかった」のです。
差を生んだのは「メンタルの準備」
この2人を分けたのは、
- 才能
- 勇気
- 投資センス
ではありません。
事前にどこまで悪いケースを想定していたか、
これだけです。
想定外の下落は、
人を行動させます。
想定内の下落は、
人を静かにします。
平均リターンは、この差を説明できない
平均リターンだけを見ると、
この2人の違いは説明できません。
なぜなら、
- 数字上は同じ期待値
- 同じ条件
だからです。
しかし現実では、
「どの順番で起きるか」と
「そのとき何をするか」
が結果を決めます。
モンテカルロシミュレーションが示す現実
モンテカルロシミュレーションでは、
- 同じ条件
- 同じ平均リターン
でも、
- 最終資産が大きくばらつく
ことが可視化されます。
これは計算の誤差ではなく、
現実に起こりうる結果の幅です。
この分布を見て初めて、
- 半分になる人が存在する
- 2倍になる人も存在する
という事実を受け入れられます。
積立投資でも同じことが起きる
この話は、一括投資だけではありません。
積立投資でも、
- 暴落初期に積立をやめた人
- 積立を続けた人
では、結果が大きく変わります。
「いつ始めたか」よりも、
「どう耐えたか」のほうが重要なのです。
本当の条件差は「行動が変わらないこと」
結局、
資産が半分になった人と2倍になった人の違いは、
行動が途中で変わったかどうか
これに尽きます。
そして行動を変えないために必要なのは、
- 高い利回り
- 精密な予測
ではなく、
- 想定の幅
- 最悪ケースへの理解
- メンタルの余白
です。
同じ条件で始めても、同じ結果にはならない
投資では、
同じ条件で始めれば、
同じ結果になる
という前提が成り立ちません。
成り立つのは、
同じ条件でも、
行動が変われば結果は変わる
という現実です。
差を生むのは「事前の想定」
資産が半分になる人と、
2倍になる人。
この差を生んだのは、
市場ではありません。
事前にどこまで想定していたか、
そして
想定外に出会ったとき、行動を変えたか。
投資の結果は、
市場よりも先に、
自分の想定の中で決まっているのかもしれません。