― 投資判断を狂わせる“%表示のワナ” ―
投資の話になると、必ず出てくる言葉があります。
「その商品、手数料が高いから損だよ」
一見もっともらしく聞こえますが、
この言葉をそのまま信じて判断すると、逆に損をするケースは少なくありません。
本記事では、
- 手数料を「%」ではなく「実額」で見る
- 長期投資で本当に効いてくるコストとは何か
- 手数料だけで投資を避けることのリスク
を、具体例を使って整理します。
なぜ「手数料が高い=損」と言われやすいのか
理由は単純です。
- 手数料は確実に引かれる
- リターンは不確実
この構図だけを見ると、
「確実なマイナス=悪」
と考えたくなるのは自然です。
しかし、ここで多くの人が見落としているのが、
手数料は“%”ではなく“金額”で考えるべき
という視点です。
% 表示が判断を誤らせる
たとえば、こんな表現。
- 信託報酬率:年1.5%
- 信託報酬率:年0.1%
この数字だけを見ると、
1.5%は高すぎる
0.1%が正解
と思ってしまいがちです。
しかし、重要なのは「いくら払うか」です。
実額で見てみる:少額投資の場合
仮に、
- 投資額:100万円
- 年間手数料:1.5%
この場合の手数料は、
100万円 × 1.5% = 年15,000円
月換算すると、
約1,250円です。
これをどう感じるか。
- 高すぎる
- 妥当
- その価値がある
評価は人によって分かれますが、
「1.5%」という数字だけで判断するのは早計だと分かります。
長期で見るとどうなる?
では次に、
「長期だと雪だるま式に増えるから危険」
という主張を検証します。
前提条件
- 投資額:100万円
- 運用期間:20年
- 年平均リターン:5%
- 手数料:1.5%
実質リターンは約3.5%。
20年後の資産は、
約200万円前後になります。
一方、
- 手数料0.1%
- 実質リターン4.9%
なら、
約260万円前後。
差は確かに出ます。
ただし重要なのは、
どちらも「増えている」
という事実です。
本当の比較対象は「やらなかった場合」
ここで忘れてはいけない比較対象があります。
それは、
投資をやらなかった場合
です。
- 銀行預金に置いたまま
- 実質利回りほぼ0%
20年後、
資産はほぼ100万円のままです。
つまり、
- 手数料1.5%で運用 → 約200万円
- 手数料0%で何もしない → 約100万円
この差は極めて大きい。
「手数料が高いから損」という判断で
投資自体を避けてしまうことが、最大の機会損失
になるケースは非常に多いのです。
手数料が“本当に”問題になるケース
もちろん、
「手数料は何でもいい」
と言いたいわけではありません。
次のような場合、手数料は明確に問題です。
① 商品内容と手数料が釣り合っていない
- 中身がインデックスとほぼ同じ
- なのに手数料が高い
これは避けるべきです。
② 短期売買を前提にしている
- 売買回数が多い
- その都度コストが発生
この場合、
手数料がパフォーマンスを直撃します。
③ 「よく分からない商品」を高コストで持っている
- 仕組みが理解できていない
- なぜその商品なのか説明できない
この状態で高い手数料を払うのは危険です。
手数料よりも重要な3つの視点
① 続けられるかどうか
手数料が安くても、
- 値動きが怖くてやめる
- 下落局面で売ってしまう
これでは意味がありません。
続けられる設計かどうかが最優先です。
② 投資行動を改善してくれるか
- 自動積立
- 感情的な売買を防ぐ仕組み
- 長期視点を保てる設計
これらがある商品は、
多少の手数料以上の価値を持つことがあります。
③ 手数料の“対価”が何か分かっているか
- 分散
- 管理の手間削減
- 行動ミスの防止
手数料は
コストであると同時に、サービス料です。
何に払っているのか理解できていれば、
判断はブレません。
「手数料が高いから損」は思考停止ワード
この言葉の一番の問題点は、
考えなくて済む
ことです。
- 中身を見ない
- 目的と合っているか考えない
- 他の選択肢と比較しない
その結果、
- 投資を始めない
- 必要以上にリスクを避ける
- 老後資金が足りなくなる
という、本末転倒な結果につながりやすい。
見るべきは「%」ではなく「意味」
- 手数料は実額で考える
- 長期では差は出るが、ゼロかどうかが最重要
- 投資しないことのコストは見えにくい
- 手数料の対価を理解すれば判断はブレない
「手数料が高いから損」という一言で
思考を止めるのは簡単です。
しかし、
投資で本当に損をするのは、考えることをやめたとき。
数字の裏にある意味まで見て、
自分にとって最適な選択をすることが、
長期的には最大のリターンにつながります。
手数料は運用成績に影響を与える要素ではありますが、「実額」で捉えると、多くの場合は制度のメリットや長期運用の効果が勝ります。大切なのは、手数料の大小だけで判断するのではなく、資産形成全体の流れの中で位置づけて考えることです。
下記ページでは、こうした長期的な資産形成をより現実的にとらえるための考え方や、将来の資産推移を客観的に把握するためのシミュレーション解説も整理しています。より納得感のある資産計画を立てたい方は、あわせてご覧ください。
