コラム

付加年金とは?長生きするほどお得な「+400円」の制度を徹底解説

国民年金だけでは老後の生活が不安…という人は少なくありません。
そんな中、小さな負担で確実に将来の年金額を増やせる制度として注目されているのが「付加年金(ふかねんきん)」です。
月400円の上乗せで、2年で元が取れるとも言われるこの制度。仕組み・メリット・注意点をFPの視点でわかりやすく解説します。


付加年金とは?

付加年金とは、国民年金の第1号被保険者(自営業者・フリーランス・無職など)が加入できる上乗せ年金制度です。
国民年金の保険料に加えて、月額400円を追加で納めることで、将来の老齢基礎年金に上乗せして受け取ることができます。

加入できる人

付加年金に加入できるのは、次の条件を満たす人です。

  • 国民年金の第1号被保険者(自営業・フリーランス・学生など)
  • 保険料免除や猶予を受けていない人
  • 任意加入者(60歳以降に加入している人)も対象

一方で、会社員(第2号被保険者)やその配偶者(第3号被保険者)は、通常この制度を利用できません。


付加年金の仕組みと計算方法

付加年金の受給額はとてもシンプルな計算式で決まります。

年間の付加年金額 = 200円 × 納付月数

つまり、1ヶ月につき200円、1年(12ヶ月)で2,400円が上乗せされます。
例えば、10年間(120ヶ月)支払えば、
200円 × 120ヶ月 = 24,000円/年
が老齢基礎年金に上乗せされるのです。

一方、支払総額は400円 × 120ヶ月 = 48,000円
そのため、受給開始からわずか2年で元が取れる計算になります。
以後は生涯にわたって上乗せが続くため、「長生きするほど得をする制度」と言われます。


付加年金のメリット

① 圧倒的な費用対効果

わずか月400円という負担で、年金を確実に上乗せできる点が最大の魅力です。
単純に計算しても、「支払った金額の2倍が返ってくるまで2年程度」、それ以降はすべて“プラス”になります。
特に平均寿命が延びている現代では、加入期間が短くても高いリターンが期待できます。

② 確実でリスクのない「年金運用」

投資信託やNISAのような運用リスクが一切なく、将来の給付が法律で保証されています。
変動リスクがないため、「低リスク・低負担で老後資金を増やしたい」という層にぴったりの制度です。

③ 税制上のメリット(全額控除)

付加年金の保険料も、国民年金保険料と同じく全額が社会保険料控除の対象です。
所得税・住民税の節税効果もあるため、実質的な負担は400円よりさらに軽くなります。


付加年金の注意点・デメリット

① 厚生年金加入中は利用できない

会社員や公務員(第2号被保険者)は国民年金の上乗せ部分として厚生年金に加入しているため、付加年金には入れません。
また、第2号被保険者に扶養されている配偶者(第3号被保険者)も対象外です。

ただし、退職して第1号被保険者に戻った場合や、60歳以降に任意加入する場合は、再び付加年金に加入できます。

② 免除期間・追納期間中は付加できない

保険料の全額免除・一部免除・学生納付特例・納付猶予を受けている期間は、付加年金を同時に納めることはできません。
この期間分を後からまとめて追納する場合も付加は不可です。
あくまで「実際に納付している月」だけが対象となります。

③ 受給開始前に死亡した場合は損をする

付加年金は将来の老齢基礎年金に上乗せされる仕組みのため、年金を受け取る前に死亡した場合は支払った分が戻らないというデメリットがあります。
遺族年金や寡婦年金には反映されません。
「長生きするほど得、早く亡くなると損」という典型的な特徴を持ちます。

④ 加入手続きが必要

付加年金は自動で付加されるわけではなく、自分で申し出ないと加入できません
市区町村役場や年金事務所で「付加保険料納付申出書」を提出する必要があります。
翌月からの適用となるため、思い立ったら早めに手続きを行うのがポイントです。


付加年金と「任意加入」との組み合わせ

60歳以降も国民年金に任意加入している人は、付加年金も併せて加入可能です。
この場合、老齢基礎年金の増額と付加年金の上乗せを同時に受けられるため、非常に効率的です。

たとえば、60歳から65歳までの5年間で任意加入+付加年金を行うと:

  • 任意加入による増額:約8,500円/月(基礎年金分)
  • 付加年金による増額:200円 × 60ヶ月 = 12,000円/年(=1,000円/月)

→ 合計で約月9,500円の年金増額効果が期待できます。
老後の安定収入としては非常にコスパの高い方法です。


国民年金基金との併用はできない

ここで注意すべきなのが、国民年金基金と付加年金は併用できないという点です。

なぜ併用できないのか?

国民年金基金も付加年金も、いずれも「国民年金の上乗せ年金」に位置づけられており、
両方を同時に加入すると二重の上乗せになってしまうためです。
法律上、どちらか一方しか選べません。

どちらを選ぶべきか?

  • 長生きリターンを狙う・小額で確実に増やしたい人 → 付加年金
  • 毎月1万円以上を老後に備えて積み立てたい人 → 国民年金基金

国民年金基金は、将来の年金額を設計できる「確定給付型」で、所得控除も大きく節税効果が高い一方、
途中解約ができず負担が重くなりやすいというデメリットもあります。
一方の付加年金は、月400円だけで完結する「シンプル・高効率型」といえるでしょう。


iDeCo(イデコ)との併用は可能!

付加年金はiDeCo(個人型確定拠出年金)と併用可能です。
iDeCoは掛金を自分で運用する「積立投資型年金」で、税制優遇が大きいのが特徴です。

項目付加年金iDeCo
制度タイプ公的上乗せ年金(確定給付)私的年金(確定拠出)
リスクなし(国が保証)運用成績により変動
掛金月400円固定月5,000円〜68,000円(職業により上限)
税制優遇全額社会保険料控除全額所得控除+運用益非課税
解約不可原則60歳まで引き出せない

併用のポイント

付加年金で「確実なベース年金」を増やし、iDeCoで「運用による上乗せ」を狙う組み合わせが最もバランスが良い方法です。
付加年金は短期でも効果があり、iDeCoは長期で育てるという役割分担を意識するとよいでしょう。


NISAとの併用で「流動性」を補う

NISA(少額投資非課税制度)は、iDeCoと違っていつでも引き出しができる投資制度です。
そのため、付加年金やiDeCoのように老後までロックされる資金ではなく、
「中期資金」「老後前の予備資金」として活用できます。

併用の考え方

  • 付加年金:生涯保証の“確実な年金上乗せ”
  • iDeCo:60歳以降の“長期老後資金”
  • NISA:いつでも使える“流動性のある資産形成”

この3つを組み合わせることで、
「安定性」「成長性」「柔軟性」をすべてカバーできる資産形成プランが実現します。

特に自営業者の場合、会社員に比べて社会保険制度が薄いため、
「付加年金+iDeCo+つみたてNISA」の三本柱は非常に有効な老後対策です。


付加年金を含めた制度の比較表

制度名対象者掛金受取時期メリット注意点
付加年金第1号被保険者・任意加入者月400円65歳以降確実に増える・2年で元が取れる国民年金基金と併用不可
国民年金基金第1号被保険者月1,000円〜68,000円60歳〜65歳以降将来の給付額が確定・節税大途中解約不可・保険料負担が重い
iDeCo会社員・自営業・専業主婦月5,000円〜上限あり原則60歳以降運用益非課税・全額所得控除途中引き出し不可・運用リスクあり
NISAすべての成人月100円〜いつでも運用益非課税・自由度高い損失が出る可能性あり

付加年金の手続き方法

申請窓口

  • 住所地の市区町村役場(国民年金窓口)
  • または最寄りの年金事務所

必要書類

  • 年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
  • 印鑑
  • 口座振替を希望する場合は通帳と届出印

手続きが完了すると、翌月分から400円が通常の国民年金保険料に上乗せされて請求されます。


付加年金の活用が特におすすめな人

  • 自営業・フリーランスで厚生年金がない人
  • 老後の年金額を確実に増やしたい人
  • NISAや投資が苦手な人
  • 60歳以降に任意加入している人
  • 長寿を見込んでいる人

「年金の上乗せ」と聞くと難しそうですが、付加年金はもっとも簡単で効果の高い老後資金対策です。


400円の積み重ねが生涯の安心に

付加年金は、「小さな負担で大きな安心を得られる制度」です。
リターンの高さ、税制優遇、そして国が保障する確実性という3つの強みを兼ね備えています。
特に自営業者や任意加入者にとっては、将来の年金を底上げする最後のチャンスと言えるでしょう。