― 「やる意味がない」と判断する前に考えるべきこと ―
「もう50代だし、今さらiDeCoを始めても遅いですよね?」
これは、FP相談の中でも非常によく聞く質問です。
確かに、iDeCoは
- 長期運用が前提
- 若いうちから始めるほど有利
というイメージが強い制度です。
そのため、50代になると
もう時間がない
今からやっても増えない
かえってリスクでは?
と感じるのは自然な反応でしょう。
しかし結論から言うと、
50代からのiDeCoは「遅い人」と「十分意味がある人」がはっきり分かれます。
本記事では、
感覚論ではなく
期待値(=得失の平均値)という視点で、
50代iDeCoの是非を検証します。
iDeCoは「増やす制度」だけではない
iDeCoというと、
どうしても「資産を増やすための制度」と思われがちです。
しかし本質は、
- 老後資金を確保する
- 税制優遇で“取り分”を増やす
この2点にあります。
特に50代の場合、
運用益よりも税制メリットの比重が大きくなる
という特徴があります。
50代からiDeCoが「遅い」と言われる理由
まず、否定的な意見が出やすい理由を整理します。
① 運用期間が短い
50代で始めると、
- 運用期間は10年前後
- 20〜30年の複利は使えない
このため、
「大きく増やすのは難しい」
というのは事実です。
② 価格変動リスクを取りにくい
退職が近づくにつれ、
- 元本割れへの耐性が下がる
- リスクを抑えたい心理が強くなる
結果として、
期待リターンも抑えられます。
③ 60歳まで引き出せない
50代から始めると、
- 拘束期間が短いとはいえ
- 途中で使えない制約は同じ
「今さら縛られるのは嫌だ」
と感じる人も多いでしょう。
それでも「期待値」で見ると話は変わる
では本題です。
50代からiDeCoをやる意味はあるのか?
ここでは
「増えるかどうか」ではなく、
期待値=平均的に得か損か
という視点で考えます。
ケース① 会社員・公務員(所得税率が高い人)
例えば、
- 年収600万円
- 所得税+住民税:20%
- 月2万円(年24万円)をiDeCoに拠出
- 10年間拠出
この場合、
掛金総額
24万円 × 10年 = 240万円
節税額(単純計算)
240万円 × 20% = 約48万円
これは
運用成績に関係なく確定で得られる効果です。
仮に運用がほぼ横ばいでも、
- 実質的な「割引価格」で老後資金を作っている
状態になります。
ケース② 運用益を控えめに見積もった場合
仮に、
- 年率2%
- 10年運用
とすると、
となり、最終資産は約260万円前後。
ここに
節税48万円分を加味すると、
期待値としてはかなり悪くありません。
ケース③ 運用しなくても「期待値がプラス」になる理由
ここが重要なポイントです。
iDeCoは、
- 掛金時に節税
- 運用益は非課税
- 受取時も控除あり
という
三段階優遇があります。
そのため、
大きく増えなくても
トータルで見ると得になりやすい
という構造を持っています。
50代からの場合、
運用益よりも節税効果が期待値を押し上げる
と考えるのが現実的です。
50代からiDeCoをやる「意味がある人」
ここまでを踏まえると、
次のような人には意味があります。
- 所得税・住民税をしっかり払っている
- 老後資金を別枠で確保したい
- 60歳まで使わないお金がある
- 大勝ちは狙っていない
この場合、
iDeCoは
「低リスクで期待値がプラスになりやすい制度」
になります。
50代からiDeCoをやる「意味がない人」
一方で、次のような人は慎重になるべきです。
- 生活防衛資金が不足している
- 近い将来、大きな支出予定がある
- 税率が低く節税効果が小さい
- 資金拘束に強いストレスを感じる
この場合、
無理にiDeCoを選ぶ必要はありません。
「50代から遅い」の正体は勘違い
多くの場合、
若い人の成功例
長期複利の話
と比べてしまうことで、
「遅い」という感覚が生まれます。
しかし、
50代のiDeCoは
別のゲームをしています。
- 若者:時間と複利
- 50代:税制と確実性
この違いを理解すれば、
判断基準は明確になります。
50代からのiDeCoは「期待値」で判断すべき
- 確かに若者より有利ではない
- しかし「意味がない」とは限らない
- 節税効果が期待値を押し上げる
- 増やすより「取り分を増やす」制度
50代からiDeCoをやるかどうかは、
年齢ではなく
条件と目的で決めるべきです。
「もう遅い」と切り捨てる前に、
一度だけ、自分の場合の期待値を考えてみる。
それだけで、判断はかなりクリアになるはずです。
50代からのiDeCoは「もう遅い」と感じられがちですが、本質的には、年齢そのものよりも 期待値・税制メリット・資金の役割分担をどのように設計するかが重要です。短期で大きく増やすことよりも、限られた期間で確実性を高めるための選択肢として機能する場合もあります。数字だけでは見えないリスクと余白を俯瞰し、自分に合ったかたちで制度を使いこなすことが、50代以降の堅実な老後資産づくりにつながります。
下記ページでは、こうした中高年期の資産形成を「期待値」で捉える視点や、将来の資産推移を客観的に確認できるシミュレーション解説も整理しています。より精度の高い老後計画を描きたい方は、あわせてご覧ください。
