― 後悔の正体は、投資そのものではない ―
新NISAが始まり、
「NISAはやったほうがいい」
「やらないと損」
という言葉が当たり前のように語られるようになりました。
しかしその一方で、表には出にくいものの、
「正直、NISAを始めなければよかったと思ったことがある」
と感じている人も、確実に存在します。
これは、投資が失敗した人だけの話ではありません。
むしろ、多くの人が“途中のどこか”で一度は感じる感情です。
本記事では、
人が「NISAを始めなければよかった」と感じる瞬間を整理し、
その感情の正体と、なぜそう感じてしまうのかを解説します。
① 含み損が長期間続いたとき
もっとも多いのが、この瞬間です。
- 始めた直後に下落
- 数か月、あるいは数年戻らない
- 気づけば含み損が当たり前の状態
この状態が続くと、
頭では「長期投資だから」と分かっていても、
心はこう囁き始めます。
「こんな思いをするなら、やらなければよかったのでは?」
特に厄介なのは、
一気に下がるよりも、じわじわ下がるケースです。
- 毎月積み立てているのに増えない
- 頑張っている実感がない
- 時間だけが過ぎていく
この“報われない時間”が、
後悔の感情を静かに育てていきます。
② 周囲と比較してしまったとき
投資は本来、
他人と比べるものではありません。
しかし現実には、
- SNSで「〇〇万円増えた」
- 同僚が「NISAで儲かっている」
- ニュースで「〇年ぶり高値」
こうした情報が、
常に目に飛び込んできます。
そのたびに、
- 自分の選択は間違っていたのでは
- タイミングが悪かったのでは
- 他のやり方の方がよかったのでは
という疑念が生まれます。
この比較が続くと、
「NISAをやらなければ、こんな気持ちにならずに済んだのに」
という後悔に変わります。
③ 「非課税なのに減っている」と気づいたとき
NISAには、
「非課税=安心」というイメージがあります。
そのため、含み損が出たときに、
- 非課税なのに減っている
- 国の制度なのに不安
- こんなはずではなかった
という違和感を覚える人が少なくありません。
この瞬間に生まれる後悔は、
損失そのものよりも、期待とのギャップから来ています。
- 思っていたよりも値動きが激しい
- 安全だと思っていた
この認識のズレが、
「始めなければよかった」という感情を引き起こします。
④ お金が自由に使えなくなったと感じたとき
NISAで積み立てを始めると、
毎月の可処分所得は確実に減ります。
最初は、
- 将来のため
- そのうち慣れる
と思っていても、
- 予想外の出費
- 生活の変化
- 気持ちの余裕のなさ
が重なると、
「このお金、今使えていたら…」
という感情が生まれます。
この瞬間、
NISAは“将来の味方”ではなく、“今の足かせ”に見えてしまいます。
⑤ 売りたくても売れないと感じたとき
NISAは、
「長期保有が前提」の制度です。
そのため、
- 下がっている
- 不安が強い
- でも売ると枠が戻らない
という状況に陥ると、
強いストレスを感じる人がいます。
これは、
- 持っているのに自由がない
- 自分で決められない
という感覚を生みやすく、
「こんな制約があるなら、始めなければよかった」という後悔につながります。
なぜこの後悔は「NISA」に向かうのか
ここまで挙げた瞬間を見てみると、
共通点があります。
それは、
後悔の原因が“制度そのもの”ではないという点です。
- 下落
- 比較
- 不安
- 生活の圧迫
これらは、
NISAがなくても投資をしていれば起こり得るものです。
それでも人は、
「NISAを始めなければよかった」と感じてしまいます。
理由は簡単で、
NISAは“選択の象徴”だからです。
本当の後悔の正体は「想定不足」
実務の現場で話を聞いていると、
後悔している人の多くに共通するのは、
- 下がる可能性を頭では理解していた
- でも感情までは想定していなかった
という点です。
つまり後悔の正体は、
損失ではなく、想定不足です。
- どれくらい下がるか
- どれくらいの期間、増えないか
- そのとき自分はどう感じるか
ここまで想定できていないと、
どんな制度でも、どんな商品でも、
後悔は避けられません。
「始めなければよかった」と感じた人が、最終的に分かれる道
この感情を抱いたあと、人は大きく2つに分かれます。
① 感情のまま行動する人
- 積立をやめる
- 売却する
- 投資から距離を取る
この場合、
後悔は「確定」します。
② 感情を理解し、設計を見直す人
- 金額を下げる
- 期待値を調整する
- 情報との距離を取る
こちらの場合、
後悔は「通過点」になります。
「後悔」は失敗の証拠ではない
「NISAを始めなければよかった」と感じる瞬間は、
投資をしていれば誰にでも訪れます。
それは、
- 自分が弱いから
- 判断を誤ったから
ではありません。
現実と向き合い始めた証拠です。
NISAは、
始めた瞬間から成果が出る制度ではありません。
むしろ、
途中で一度は「やらなければよかった」と思わせる仕組みです。
大切なのは、
その感情が出たときに、
- なぜそう感じたのか
- 何が想定外だったのか
を言語化できるかどうか。
後悔を感じた瞬間こそ、
NISAが「自分の投資」として動き出すタイミングです。
NISAで後悔しやすい瞬間を知ることは、制度の使い方だけでなく、資産形成全体の心構えや行動設計を見直すきっかけになります。失敗体験を単なる反省に終わらせず、長期的な視点で計画全体を俯瞰することが、本当の改善と成果につながります。
下記ページでは、こうした長期的な資産形成の考え方や、将来の資産推移を客観的に捉えるためのシミュレーション解説も整理しています。より納得感のある計画を立てたい方は、あわせてご覧ください。
