― 分配金の「中身」を知らずに損をしないために ―
毎月分配型の投資信託や高配当ファンドは、「毎月お金が入ってくる安心感」が魅力です。しかし、その分配金のすべてが運用による利益とは限りません。
中には、元本を取り崩して分配金を支払っているケースも存在します。これがいわゆる「タコ足分配(タコ足配当)」です。
本記事では、タコ足分配の仕組みと考え方を整理したうえで、月報を使って実際に見分ける方法を解説します。
「知らないうちに元本が減っていた」という事態を防ぐためにも、ぜひ最後までご覧ください。
タコ足分配とは何か
タコ足分配とは、実質的な投資先から得られた収益以上の分配金を投資家に支払っている状態を指します。
投資先から生まれた利子や配当(インカムゲイン)だけでは足りず、不足分を投資家自身の元本から払い戻している、という構造です。
そのため、運用期間が長くなるほど、
- 基準価額が下がりやすい
- 元本が徐々に目減りしていく
という特徴があります。
ただし、タコ足分配=悪と一概に決めつける必要はありません。
たとえば、運用益と元本の一部を計画的に取り崩し、生活資金として活用している人にとっては、銀行預金を都度引き出す手間を省ける便利な仕組みとも言えます。
重要なのは、
「今もらっている分配金のうち、どこまでが収益で、どこからが元本なのか」
を正しく理解しているかどうかです。
月報で見るタコ足分配の基本的な見分け方
タコ足分配を見極める第一歩は、投資信託の月報です。
特に注目すべきなのは、
- 「利子収入」
- 「利子相当収入等」
- 「インカムゲイン」
といった項目です。これらはいずれも、資産価格の値上がり・値下がりとは関係なく、投資先から定期的に支払われる収入を表しています。
利子収入以上の分配金は要注意
ここで債券型投資信託である、フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド
(毎月決算型)B(為替ヘッジなし)を例に説明いたします。

上図の月次運用レポートに記載されている 受取利息等(現地通貨ベース) 18 が、その月に投資先の債券から安定的に得られた利息になります。
基準価額の月額騰落額の内訳を見ると
- 受取利息等:18円
- 分配金:-20円
とあり、差額のマイナス2円分は元本から支払われている可能性が高いと判断できます。
さらに忘れてはいけないのが、信託報酬などの運用コストです。
この場合、信託報酬等が-5円となっているので、実質的には
- − 2円 + (− 5円) = − 7円
7円分がタコ足分配ということになります。
従って、受け取った分配金 20円のうち、7円分はタコ足分配ということになります。
売買損益や為替損益は「ゼロ」で考える
月報には、
- 価格変動(有価証券売買損益)
- 為替変動要因(為替差損益)
といった項目も並びます。
しかし、これらは市場環境や為替レートの変動によって大きく上下する、偶然性の高い収益です。
一時的にプラスになっていても、将来も同じ水準で続く保証はありません。
そのため、タコ足分配を判断する際は、
売買損益・為替損益はゼロとみなす
という保守的な見方が重要になります。
安定的に見込める利子収入と、分配金・信託報酬の項目によって判断することで、実態が見えやすくなります。
特別分配金を取っておけば元本は守れる
「元本を減らしたくない」という場合、シンプルな考え方があります。
それが、普通分配金分だけを使い、特別分配金分は取っておくという方法です。
- 普通分配金:利益部分
- 特別分配金:元本からの払い戻し部分
特別分配金を使わずにその分を残しておけば、結果として元本は保全されます。
なお、特別分配金しか出ていない月が続く場合は、その期間は実質的な利益が出ていないことを意味します。
つまり、全額自分の元本の払戻金です。
このようなケースが多々見受けられるので、分配金の額だけで判断せず中身を見ることで十分注意することが重要です。
株式型・REIT型 投資信託でも考え方は同じ
株式型やREIT型、複合型の投資信託でも、基本的な見方は同じです。
これらのファンドは値上がり益(キャピタルゲイン)を狙う比重が高く、配当等収益が少ないケースも多く見られます。
それでも、
分配金のうち、安定した収益分はいくらか
元本を取り崩している割合はどれくらいか
を把握しておくことは、長期的な資産管理において非常に重要です。
ただ、ここまでの説明は理論としては分かっても、
「自分の数字で当てはめたらどうなるのか」は
まだ分からない状態かもしれません。
そこで大切なのは、
単なる理論ではなく、自分自身の前提条件を入れて
結果がどれくらいブレるのかを実際に確認することです。
▼ あなたの想定条件で、運用結果の振れ幅を確認してみてください。
分配金は「額」ではなく「中身」を見る
タコ足分配の仕組みを知らずに分配金の全てを使ってしまうと、元本を大きく減らしてしまう原因になります。
一方で、内訳を理解したうえで分配金を使えば、計画的な資金取り崩しという有効な手段にもなります。
大切なのは、月報を確認し、分配金の中身を自分の目で判断することです。
「毎月いくらもらえるか」だけでなく、
「そのお金はどこから来ているのか」
この視点を持つことが、後悔しない投資につながります。
